今日も天王寺も大阪も塾も家庭教師も何も関係ないですが、別記事でも話したバラードについての話をします。
さて、フイリップ・バラードに話を戻すとしよう。彼が生徒に実施した最初の確認テストは、「へスペラス号」の詩を思いだせた量を測る役割を果たしただけではない。覚えた詩の「保存の力」と「検索の力」を高める役割も果たした。テストをする前に比べて、その記憶をより深く定着させるとともに、より簡単に引きだしやすくしたのだ。
2日後に同じテストを抜き打ちで実施したとき、最初のテストで思いだせた行は、すぐにはっきりとそのほとんどを思いだすことができた。その結果、それ以上の言葉をかき集める時間が脳に生まれた。
だから、思いだせた行を、残りの詩を探す骨組みとして、部分的に完成しているジグソーパズルとして、思いだせていない行を探りだすための手がかりとして活用したのだ。バラードが覚えさせた詩の一節というのは、言ってみれば、修辞表現と意味の塊だ。それこそまさに、「レミニセンス」の効力が何よりも強い素材である。だから、生徒たちの点数は上がって当然なのだ。
もちろん、「ヘスペラス号」のことを考えるのをやめれば、いずれその記憶は脳の奥深くに沈み、それを検索する力は限りなくゼロに近づくだろう。しかし、3回日、4回日とテストを重ね활るたびに、その詩は記憶のなかにいっそう深く定着していく。
詩の記憶を引きだせと定期的に命じられるようになった脳は、詩の一部を成す言葉や行を探し続け、テストのたびに、1行もしく!はいくらかの言葉を以前よりも多く引きだそうとする。たとえ1回日のテストで半分しか思いだ{せなくても、回を重ねていけば、いずれ詩のすべてを思いだせるだろうか?その可能性は低い。いくらか多くは思いだせても、全部は無理だ。
記あなたも実際に、1日後か2日後に自分でテストしてみるといい。先ほど覚えた「ヘスペラスか号の難破」を、何も見ずに思いだせるだけ書きだしてみるのだ。
この章の冒頭でテストしたとき}と同じ時間を制限時間とし、結果を比較してみよう。たいていの人は、2回日の成績のほうがいい。
記憶を使えば記憶は変わる。そいく脳に定着する。
それは、余計な情報をふる己爱にかけるとともに、覚えたことを一時的に断絶することで可能になる。断絶した記憶をその後再び引きだすと、検索の力と保存の力が以前よりも高まるのだ。こうした働きは、脳生物学と認知科学によって明らかにされた、記憶の基本的な原理である。これらの原理が、次章から説明するさまざまな学習テクニックの土台となり、テクニックの理解を助けてくれる。